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Miles Davis / Bitches Brew LP 2枚組 US盤【USED Vinyl】
¥4,400
黒い渦だ。ジャケットを開けば、そこにはもう秩序というものがない。マティ・クラーワインの絵が、燃える花と割れた横顔を並べて、何かの儀式を予告している。1969年、8月。ニューヨークのスタジオで、マイルスは楽器を減らすかわりに、楽器の数を増やした。エレクトリックピアノが三台。ベースが二本。ドラムが二人。もう誰にも制御できない密林を、あえて作った。 テオ・マセロの編集鋏が、その密林に道をつけた。切って、貼って、また切って。ジャズという言葉がもう追いつかない音楽が、そこに生まれた。ロックでもファンクでもアフリカでもない。全部でありながら、全部を裏切っている。 このアルバムには、MANDHELING G1を合わせる。重厚で、ダークで、土の匂いを引きずる豆だ。すっきりとは終わらない。喉の奥に、いつまでも居座る苦みがある。Bitches Brewも同じだ。聴き終えても、しばらく体の中で渦を巻いている。
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Zoot Sims Quartet / Zoot LP 国内盤【USED Vinyl】
¥1,800
ブレている。その表情が怒りとも悲しみともつかないZootの第一印象となった。 1956年10月12日の録音。ズート・シムズは白人テナーの中でも異色の存在だった。マイルス・デイヴィスにさえ評価されたという逸話が、そのままこの盤の説得力になっている。レスター・ヤングから受け継いだ歌心を、若干の崩れも許しながら、まっすぐ吹き抜ける。ワン・ホーンのカルテット編成だからこそ、余計な仕掛けがすべて削ぎ落とされている。 ジョニー・ウィリアムスのピアノが控えめに寄り添い、ノビー・トッターのベースとガス・ジョンソンのドラムが、ただ歩くようにリズムを刻む。派手さのない4人が、ズートという一人の魅力だけを浮かび上がらせるために存在している。 この一枚には、WOTE KONGAを合わせる。メロウで、バラードのように解けていく豆だ。ズートの吹く"The Man I Love"や"That Old Feeling"のように、構えず、ただ寛いで聴くための一杯になる。
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Peggy Lee / Black Coffee 【USED Vinyl】
¥1,800
真夜中、眠れない。 床を歩きまわり、ドアを見張る。そのあいだにブラック・コーヒーを飲む。恋は使い古しのブルース。日曜の午後がどんなものか、この平日の部屋では永遠にわからない。午前一時から四時まで、影に話しかけている——「Black Coffee」の歌詞は、そういう夜の記録だ。 ペギー・リー。彼女は叫ばない。囁く。声を張り上げるかわりに、引く。その引き算が、聴く者の身を乗り出させる。ジューン・クリスティでもクリス・コナーでもない、この乾いた官能。ニコチンと、冷めたコーヒーと、来ない誰かを待つ時間。 1953年から56年、デッカ録音。ジミー・ロウルズのピアノ、ピート・キャンドリのトランペットが、煙のように寄り添う。派手な伴奏はいらない。この声には、余白がいちばん似合う。 「I've Got You Under My Skin」も、「There's A Small Hotel」も、彼女が歌うと違う色になる。明るい曲でも、どこかに夜の匂いが残る。それがペギー・リーだ。 針を落とせば、眠れない夜が始まる。 ──── COFFEE PAIRING ──── ブラックで。銘柄は問わない。 このレコードにミルクは要らない。砂糖も要らない。タイトルがすべてを言っている。ブラック・コーヒー。それだけだ。 強いて挙げるなら MANDHELING G1。深く、苦く、夜の重さを持つ一杯。眠れない夜の相棒として、これ以上のものはそうそうない。だが本当は、いま手元にあるブラックを、ただ黙って飲めばいい。ペギー・リーの声が、残りをやってくれる。
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Max Roach & Clifford Brown / In Concert 【USED Vinyl】
¥2,200
1954年、ロサンゼルス。カリフォルニア・クラブという店で、二度のライヴが行われた。4月と8月。同じ年でも、メンバーは半分入れ替わっている。テディ・エドワーズからハロルド・ランドへ。カール・パーキンスからリッチー・パウエルへ。 だがマックス・ローチとクリフォード・ブラウンは、変わらずそこにいる。師弟でも兄弟でもない、もっと直接的な信頼の形がそこにある。 もともとは10インチ盤2枚に散っていた演奏だった。12インチ化の際に、時間の都合でソロが切り刻まれた。誰も気づかないまま、何十年もそうやって流通していた。1984年、ようやく元の尺のまま、日本で一枚に編まれた。切られた小節が、戻ってきた。 ジョン・ブラントの手による装丁だ。矢の先には黒いシンバルの雲。何かが放たれた瞬間を、そのまま額に入れて飾ったようなジャケットだ。 この一枚には、あえてブレンドのmementoを合わせる。味わいが調和を重んじる一方でブラウンのトランペットも、ローチのドラムも、鳴り終わった後にまだ何か言い足りていない。そういう感触がある。
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V.A. / Jazz Piano Classics On Blue Note LP 【USED Vinyl】
¥2,200
赤の上に、黒い影が二つ。片方は鍵盤に向かって腕を伸ばし、もう片方は椅子に半身をひねって天井を仰いでいる。ジャケットのデザインそのものが、もうリズムを持っている。 ジェームス・P・ジョンソン、アール・ハインズ、アルバート・アモンズ、ミード・"ラックス"・ルイス。ストライドとブギウギ、二つの手法が同じ赤の中で並んでいる。1939年から43年にかけての録音を、1983年になってキングレコードが一枚に編んだ。左手が刻む律動の上で、右手だけが自由に動き回る。その構造そのものが、後のジャズピアノの骨格を作った。 技巧を誇るでもなく、ただ鍵盤を叩き続けることで、部屋の空気を変えていく。そういう種類の音楽だ。 この一枚には、ブレンド、mementoを合わせる。ピアノという楽器そのものに耳を寄せる時間のための一杯だ。派手さはないが、輪郭がはっきりしている。ジョンソンの指の運びと同じように、静かに、しかし着実に効いてくる。
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Django Reinhardt et Le Quintet du Hot Club de France / ジャンゴ・ラインハルトの芸術 LP 国内盤【USED Vinyl】
¥1,600
蝶ネクタイ、煙草のヤニで曇ったようなグレースケール。マイクの向こうで、ジャンゴ・ラインハルトがギターを抱えている。 火事で左手の指を2本失いながら、彼はその制約を技法に変えた。 ジプシーの血を引くベルギー生まれのギタリストは、ステファヌ・グラッペリと共にフランス・ホット・クラブ五重奏団を組み、ヴァイオリンとギターだけで新しいスウィングを作り上げた。本盤に収められた1946年から47年のパリ録音は、まさに全盛期の記録だ。 「クレピスキル」はたそがれを意味するタンゴの旋律を借り、詩的な静けさを湛える。「ジャンゴズ・ドリーム」は夢見るようなドリーミーなムード。技巧を誇るためではなく、ただ自分の物語を語るためだけにギターを鳴らしている。 この一枚には、YIRGACHEFFE ARICHAを合わせる。ギターが主役のジャズに寄り添う一杯だ。華やかでありながら、どこか儚い酸味がある。ジャンゴの指が紡ぐフレーズのように、軽やかに、しかし深く残る。
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The Modern Jazz Quartet / Concorde 【USED Vinyl】
¥1,800
ジャズにタキシードを着せた四人組がいた。 モダン・ジャズ・クァルテット。ステージに現れるとき、四人は必ず正装だった。ヴァイブ、ピアノ、ベース、ドラム。バップの汗と煙から生まれた音楽に、彼らは背筋を通した。ブロウしない。叫ばない。ジョン・ルイスのフーガが、バッハの対位法をハーレムの夜に接続する。 1955年7月2日、ヴァン・ゲルダー・スタジオ。この盤で、コニー・ケイが初めてドラムに座った。ケニー・クラークの後任。全編を貫く彼のシンバル・ワークは、白熱していながら、決して前に出ない。抑制こそが熱を高めるということを、この四人は知っていた。 表題曲「Concorde」。ルイスがパリの街の名を冠した一曲だ。フランスへの憧れ、ヨーロッパの伝統。だがそれは単なる模倣ではない。得意のフーガ形式に、即興という譲れない核が埋め込まれている。ルイスとジャクソンの見事な調和。この一曲だけで、MJQが最高のモダン・ジャズ・コンボであることの証明になる。 ミルトのヴァイブが歌い、ルイスのピアノが応える。掛け合いは双子のようだ。誰が主役でもない。四人で一つ。それがこの楽団の、最初からの流儀だった。 針を落とせば、端正な熱が部屋を満たす。急がず、崩れず、美しく。 ──── COFFEE PAIRING ──── memento 店の名を冠した豆。派手な個性で押すのではなく、全体の調和で聴かせる——その在り方が、この楽団とよく似ているからだ。 バランスのとれた甘さと、静かな余韻。ジョン・ルイスの端正なタッチのように、出しゃばらない。だが確かな芯がある。「朝日のようにさわやかに」を聴きながら、ゆっくり飲むのがいい。
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The Swingle Singers perform with The Modern Jazz Quartet / Place Vendome LP 国内盤【USED Vinyl】
¥2,200
バッハをジャズに解体するシンガーズと、ジャズにバロックを密輸するMJQ。 二つの陣営は本来、出自からして相容れない。片や教会の対位法を解体して口先だけのグルーヴに変える連中、片やジャズの側から律儀に対位法を学び直そうとする連中だ。方向は逆でも、行き着く先は同じ場所だった。パリという街がそれを許した。 1964年、シャンゼリゼの楽屋裏で交わされた「何かやらなければならない」という一言。それが律儀に2年間の準備を経て実現するあたり、ジョン・ルイスという男の性分がよく出ている。この几帳面さは、ビバップの荒々しさとは対極にある。だが几帳面だからこそ、G線上のアリアをここまで優雅に手なずけられる。 ディドのラメント。300年前の悲劇の女王が、20世紀のヴァイブとコーラスに乗って、もう一度死んでいく。バロックとモダン・ジャズが手を組むと、時間そのものが溶け出す。 MJQには、毎回mementoを合わせているな。ピアノとヴァイブが交わす静かな対話にふさわしい一杯だ。
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The Four Freshmen / In Person Volume 2 LP 国内盤 赤盤【USED Vinyl】
¥1,600
ムーン・リヴァーが無伴奏で始まる。それだけで、もう勝負は決まっている。伴奏を切り捨てるということは、逃げ場を切り捨てるということだ。4人の声だけが、何にも寄りかからずに空間を摑む。これができるバンドと、できないバンドの差は決定的だ。 フォア・フレッシュメンは軟弱なコーラス隊ではない。楽器を吹き、弾き、そのまま歌う。歌うために楽器を置くのではなく、楽器を持ったまま歌の中に踏み込んでいく。この二刀流こそが、彼らを単なる「うまいコーラス」から引き剥がしている。 ロングビーチの講堂に集まった学生たちは、おそらく何も知らずに座っていた。だが音が鳴った瞬間、そこはもう教室ではなくなる。ライヴ録音というのは常にそういう暴力性を持っている。整えられたスタジオの美学を殴り倒し、その場限りの熱だけを刻みつける。 赤い盤。この色を選んだのは偶然ではないだろう。血の色でもあり、祭りの色でもある。回転する円盤の上で、半世紀前の夜がいまだに燃えている。 この一枚には、WOTE KONGAを合わせる。ぬるくはない。ゆっくり溶けながら、しかし芯のところで火を持っている、そういう一杯だ。
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The Modern Jazz Quartet and The All-Star Jazz Band / Jazz Dialogue LP 国内盤【USED Vinyl】
¥1,200
対話、というタイトルの通り、腕と腕が触れ合うようだ。 MJQというコンボが、オーケストラと初めて対等に向き合った一枚。ジョン・ルイスは自分たちの当たり曲を、大編成のために書き直した。クラーク・テリー、フィル・ウッズ、ケイ・ウィンディングといった名うてのプレイヤーたちが集められ、コンボとビッグバンドが互いに譲らず、それでいて溶け合っている。優雅なだけだったルイスのオーケストレーションに、これまでにない乾いた強さが加わった一枚だ。 ジャンゴ、ホーム、ワン・ネバー・ノウズ。すでに手の内に入った曲を、もう一度別の言葉で語り直す。それが「対話」という題の意味だ。 この一枚には、mementoを合わせる。ピアノ・トリオ的な静けさと、じっくり構える室内楽的な感触を持つ豆だ。ミルト・ジャクソンのヴァイブが、オーケストラの中で一音ずつ丁寧に応答していくように、この一杯も慌てず、丁寧に淹れたい。
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Scott Joplin / The Entertainer LP 西ドイツ盤【USED Vinyl】
¥1,200
ピアノロールという発明は、演奏家を消して、演奏だけを残す。指の記憶を紙の穴に置き換え、体を殺して音だけを永続させる。これほど禁欲的な記録媒体があるだろうか。ジョプリンはこの装置に、自分の指を売り渡した。 アスタリスクの付いた曲だけが本人の演奏で、あとは誰の指かも分からない。それでいい。ラグタイムというジャンルそのものが、最初から匿名の音楽だった。サルーンのピアノ弾きに名前などいらない。踊る足だけがあればよかった。 メイプル・リーフ・ラグが鳴る。左手が正確に、機械のように刻む。右手だけが自由を持つ。この分業こそが、後のジャズに受け継がれた骨格だ。スイングもビバップも、根を辿ればこの左手の几帳面さに行き着く。 紙の穴から蘇った音に、湿った感傷はいらない。乾いた記録を、乾いたまま受け取る。 この一枚には、GAYO OLDを合わせる。枯れて、乾いて、アーカイブの匂いがする豆だ。
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Sonny Rollins / Way Out West 【USED Vinyl】
¥1,800
1957年3月7日、午前3時、ロサンゼルス。 三人は昼間、それぞれ別のスタジオ仕事で潰れていた。だからセッションは真夜中に呼ばれた。ソニー・ロリンズ、レイ・ブラウン、シェリー・マン。この三人が同じ部屋で演奏するのは、これが初めてだった。ピアノはいない。テナー、ベース、ドラムだけ。逃げ場のない編成だ。和音の布団はない。裸で立つしかない。 明け方7時。四時間ぶっ通しで半分録り終えた頃、ロリンズが言った。「今、乗ってる」。24時間起きていたシェリーが返した。「俺も弾きたくなってきた」。疲れ切っていたレイは、ただ笑った。 そこから「Way Out West」が生まれた。西へ来たことを祝う、ロリンズの自作。 ジャケットのロリンズを見ろ。ステットソン帽、ガンベルト、ホルスター。荒野にサックスを提げて立っている。カウボーイ映画で育ったニューヨークの子供が、初めて本物の西部に来た。冗談のような格好だ。だが音は冗談じゃない。「I'm An Old Cowhand」の馬の蹄のようなリズム。これほど自由で、これほど堂々とした演奏は、そうそうない。 十六分の音楽が、三十分で録れた。針を落とせば、あの夜明けの空気が戻ってくる。 ──── COFFEE PAIRING ──── GAYO OLD オールドクロップ特有の、乾いた土の質感。角の取れた深み。派手な酸はない。かわりに、どっしりとした落ち着きがある。 西部の荒野、明け方の乾いた空気。ロリンズのテナーの図太さ。この盤に必要なのは、華やかさではなく、地面のような重さだ。深めに淹れて、ゆっくり飲む。急がなくていい。あの夜明けの三人が、急がなかったように。
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Duke Ellington / Money Jungle【USED VINYL】
¥2,950
三人が同じスタジオにいた。エリントンは63歳。ミンガスは40歳。マックス・ローチは38歳。 これは穏やかなセッションではなかった。大喧嘩だったという伝説が残っている。 ミンガスはセッション途中でスタジオを出た。エリントンがエレベーターまで追いかけた。何かを言った。ミンガスは戻った。その後に録音されたのが、このアルバムだ。 タイトル曲"Money Jungle"が始まると、エリントンのピアノがブルースを叩きつける。エリントンがこんなふうに弾くとは、誰も思っていなかった。ビッグバンドのリーダーが、ミンガスとローチに押されて、自分の中の別の何かを引き出している。 "Fleurette Africaine"では一転して静かになる。ミンガスのベースが浮かぶ。ローチのブラシが消えそうに軽い。この一曲だけで、このアルバムを買う理由になる。 "Caravan"と"Solitude"はエリントン自身の旧作だ。しかし二人がいると、聴き慣れた曲が別の形をとる。 コーヒーはMANDHELING G1がいい。深く、スパイシーで、底に甘さがある。三人の間にある緊張と、その緊張の奥にある敬意に、少し似ている。
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Eric Dolphy / Last Date LP Mercury【Used Vinyl】
¥3,500
1964年6月2日、オランダのヒルフェルサム。その27日後、エリック・ドルフィーはベルリンで死んだ。36歳だった。 このアルバムが「ラスト・デイト」と名付けられたのは、そういう事情による。録音当日、ドルフィーはそのことを知らなかった。ミシャ・メンゲルベルクのトリオと、招待客だけの小さな部屋で演奏した。終演後、ドルフィーはトリオのメンバーに手紙を書いた。またいつか一緒にやろう、と。その手紙がドラマーのハン・ベニンクに届いたのは、ドルフィーの死から二日後だった。 フルート、バスクラリネット、アルトサックス。ドルフィーは三本の楽器を持ち替えながら演奏した。"You Don't Know What Love Is"では、フルートとボウイングされたベースだけが鳴る。それが人間の声に聴こえる瞬間がある。アルバムの最後、"Miss Ann"が終わった後、ドルフィーの声が録音されている。「音楽は、聴き終わったら空気の中に消える。二度と捕まえられない」と彼は言った。 それが、最後の言葉になった。 ペアリングコーヒーはマンデリンG1。深煎りの奥に、消えていく何かの気配がある。
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Minor Threat / Minor Threat (First Two Seven Inches) 【USED Vinyl】
¥4,200
誰かに何かを言われること自体が腹立たしいから、音楽で叫ぶことに決めた。自由を求める姿勢、誰とも同じではない表明。Straight Edge. 1981年、ワシントンD.C.。イアン・マッケイは十九歳だった。酒を飲まない。ドラッグをやらない。誰彼構わずヤらない。それを歌にしたら、勝手に運動になった。本人が一番驚いたはずだ。四十六秒の曲に、思想の名前がついてしまった。 「Straight Edge」——直訳すれば、まっすぐな刃。定規の縁。だが本人は主義を作ったつもりなどない。ただ、自分はこうだと言っただけだ。俺はお前らと違う。それだけの話が、四十年経っても消えない。 音は速い。速すぎて、雑だ。ドン・ジエンタラのインナー・イヤー・スタジオ、機材は最小限。だがこの雑さこそが正しい。磨いたら死ぬ音というものが、この世にはある。 ジェフ・ネルソンが描いたビール瓶の男が裏ジャケでこちらを見ている。革ジャンを着た瓶。中身は空っぽ。それが誰のことなのかは、聴けばわかる。 八曲で十五分。裏返してさらに四曲。終わったら、また針を落とす。そういうレコードだ。 ──── COFFEE PAIRING ──── このレコードに似合うのはアメリカの浅煎りのコーヒーのスタイルなのかもしれない。ストレートエッジハードコアの流れはいつしかスペシャルティーコーヒーの運動に結びついていった。そう信じている。
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The Eminent Jay Jay Johnson Volume 1 【Used Vinyl】
¥5,500
The Eminent Jay Jay Johnson Volume 1 Blue Note 1505 / 1953 トロンボーンがここまで速く動けるとは、知らなかった。JJジョンソンはビバップをトロンボーンに持ち込んだ。誰もできないと思っていたことを、ただやった。クリフォード・ブラウンが横にいる。若いミンガスが下を支えている。全員、急いでいる。急いでいるのに、ちっとも雑ではない。コーヒーが届く前に、A面が終わった。ペアリングはmemento。記憶という意味のブレンドは中深煎りでバランスがいい。速さの中に軸がある、このアルバムに似ている。
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Bud Powell / The Scene Changes (The Amazing Bud Powell Vol.5)【USED Vinyl】
¥2,800
バド・パウエルは41才でこの世を去った。 悪夢とパラノイア、麻薬中毒を断つための闘病生活、今より100年ほど前に生まれたバドに病院と薬は現代の医療や精神的な文化の庇護はなかったのじゃないだろうか。 芸術にはきっと関係ない。クレオパトラの夢を録音した33才の頃の演奏がこのアルバムに収録されている。金切り声、猫科の動物が捉えた獲物を弄ぶような執拗なバップフレーズは、ジャズ喫茶とそこに通う憂鬱な青年たちを完全に魅了した。ポールチェンバースのベース、アート・テイラーのドラムス、素晴らしい。これこそがピアノトリオだ。スレスレの演奏がジャズ喫茶を席巻した。ブルーノートに違わない、真っ青なサウンドがある。 似合うコーヒーは、ブレンドだ。ジャズ喫茶をイメージした普遍的な黒いサウンドが似合う。
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Wes Montgomery / So Much Guitar! 【USED Vinyl】
¥1,800
ピックを使わない男がいた。 インディアナポリス。昼はラジオ工場で働き、夜はクラブで弾いた。近所迷惑になるからと、親指の腹で弦を撫でるように弾く癖がついた。それが世界を変えた。制約が様式になる。貧しさが音色になる。そういうことは、ときどき起こる。 1961年8月4日、ニューヨーク。ハンク・ジョーンズのピアノ、ロン・カーターのベース、レックス・ハンフリーズのドラム、レイ・バレットのコンガ。ウェスは三十八歳。名声はまだ追いついていない。だが指はもう完成している。 親指は速く弾けない。だから必要な音しか弾かない。装飾を削ぎ落とし、輪郭だけが残る。オクターヴが鳴るとき、そこには二本の弦しかないのに、部屋がひとつ埋まる。 「While We're Young」の一音目で、わかる。この男は急いでいない。急ぐ必要がない者の音だ。 ──── COFFEE PAIRING ──── YIRGACHEFFE ARICHA ナチュラルプロセス特有の、熟した果実の甘さ。輪郭がくっきりしていて、余分な要素がない。ウェスの親指が削ぎ落とした音の在り方と、この豆の澄み方は同じ場所にある。 冷めていく過程で甘さが立ち上がってくる。
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The Modern Jazz Quartet – Fontessa Atlantic MJ-7071 / 1956 USED VINYL
¥5,500
タイトル曲”Fontessa”は11分ある。 コメディア・デル・アルテの登場人物たちをモチーフにした曲だとジョン・ルイスは言った。ハルレキン、ピエロ、フォンテッサ。仮面をつけた人間たちの音楽だ。しかしミルト・ジャクソンのヴァイブラハープが鳴り始めると、仮面のことは忘れる。ブルースの体温が、どこにでも入り込んでくる。 ジョン・ルイスの構築と、ミルト・ジャクソンの即興。この二つの緊張が、MJQという四人組の全てだ。“Angel Eyes”では、その二つが最も近い場所にいる。パーシー・ヒースのベースが底を支え、コニー・ケイのドラムが羽根のように軽い。 1956年2月14日の録音だ。アトランティックに移籍しての最初のアルバム。DownBeatは最高点をつけた。 Pairing Coffee:YIRGACHEFFE ARICHA。深煎りの奥に花がある。端正な構造の中に、熱いものが宿っている。
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Tal Farlow / The Swinging Guitar Of Tal Farlow 【USED Vinyl】
¥1,800
指が長すぎた男の話をしよう。 タル・ファーロウ。看板描きの職人だった。二十歳を過ぎるまでギターに触れもしなかった。それが数年でこの国最速の指になった。誰も教えていない。誰にも教わっていない。 そして一番速くなった頃、彼は消えた。ニュージャージーで看板を描き、海辺で釣りをして、ときどき近所の店で弾いた。ジム・ホールとバーニー・ケッセルが訪ねてきて、頼むから戻ってくれと言った。ファーロウは首を横に振った。 このレコードは1956年。消える二年前の音だ。エディ・コスタのピアノが、まるで同じ一人の人間の左手みたいにギターに絡む。コスタもまた消えた。1962年、三十二の誕生日を前に、車の中で。 速さは何かから逃げるためのものだったのか。誰にもわからない。ただ盤の上で、二人の指はまだ走り続けている。追いつく者はいない。 pairing coffeeはマンデリンG1 軽快だが、意味がある。故に重たい。
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Herb Ellis & Joe Pass / Seven, Come Eleven 【USED Vinyl】
¥1,800
1973年7月29日、カリフォルニア州コンコード。夏の夜。六千人の耳。 ステージに二本のギターが並んだ。ハーブ・エリスとジョー・パス。どちらもオスカー・ピーターソン・トリオの出身。片方が先を弾けば、片方が追う。追われた方が今度は先に立つ。競っているのか、遊んでいるのか、聴いている側にはわからない。たぶん本人たちにもわからない。 ライナーにこんなやりとりが載っている。ハーブが言う。「今の曲は "Seven Come Eleven" だ」。ジョーが返す。「いや、あれは "Fast" だ」。 速い。それだけの話だ。理屈はいらない。 背後にレイ・ブラウンのベースとジェイク・ハンナのドラム。この二人は必要なときにしか音を出さない。前に出ない。前に出ないことで、二本のギターを本物のカルテットにしている。名脇役とはそういうものだ。 スタジオでは絶対に録れない音がある。客の熱、演者の軽口、その場でしか生まれない電気。これはその記録だ。針を落とせば、あの夏の夜が戻ってくる。 ──── COFFEE PAIRING ──── YIRGACHEFFE ARICHA ナチュラルの長い余韻と、熟成したワインのような味わいがある。二本のギターが弾き交わすような、この盤の快活さにちょうど合う。
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Bud Powell / The Amazing Bud Powell Vol.1 【USED Vinyl】
¥3,200
狂気は才能の裏地だった。 パウエルの指が鍵盤を叩くとき、そこには救済も反省もない。ただ落下がある。真っ逆さまの、単音の滝。ビ・バップは速度の宗教で、彼はその殉教者だった。生きることと壊れることが、同じ和音の中で鳴っている。 1949年、52丁目。煙草の煙と汗の匂い。ナヴァロのトランペットが火を放ち、二十歳のロリンズがまだ固まりきらない才能の破片を撒く。ローチのスティックが、パウエルの呪われた身体を叩き起こす。誰も、次の一小節を予測できない。 これは病んだ精神が見た夢の記録だ。美しいのではない。恐ろしいのだ。恐ろしいから、美しい。 針を落とせば、四十年代後半の狂った黄金がまわり出す。深淵はいつも、あなたのすぐ足元にある。 paring coffeeはイルガチェフェG1。限りなく透明にちかい。
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Satin Doll - Sam Gendel 【USED Vinyl】
¥4,200
サックスが溶けている。 そう感じる瞬間が、このアルバムのどこかに必ずある。旋律はある。しかしその輪郭が、少しずつ崩れていく。デューク・エリントンの”Satin Doll”、チャールズ・ミンガスの”Goodbye Pork Pie Hat”、マイルス・デイヴィスの”Freddie Freeloader”。誰もが知っているスタンダード曲が、ゲンデルの手を通ると、別の何かになって出てくる。原型は残っている。しかし夢の中で聴くような、輪郭がぼやけた何かだ。 録音は2日半で終わった。三人が同じ部屋にいた。ヘッドフォンなし、クリックトラックなし、Abletonなし。赤いランプが点いて、演奏して、止まる。次へ進む。そういう作り方だ。“Afro Blue”は友人の結婚披露宴でそのまま演奏したライブ録音で、リハーサルも打ち合わせもなかった。それでもあの音になった。 ゲンデルはサックスをただの金属の塊だと言った。でも正しい形に曲げられた金属だ、とも言った。このアルバムを聴くと、その意味が少しわかる気がする。楽器を愛しているのに、楽器に縛られていない。 ジャズと呼んでもいい。しかしジャズセクションに置くには少し違う、とPitchforkは書いた。その感覚は正しい。 コーヒーはYIRGACHEFFE ARICHAがいい。深煎りの奥に、花のような華やかさがある。このアルバムもそうだ。スタンダードという深みの奥に、別の光が宿っている。
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Wes Montgomery – Goin’ Out Of My Head 【USED VINYL】
¥2,200
ウェス・モンゴメリーは親指でギターを弾いた。 ピックを使わなかった。だから音が柔らかい。角が立たない。しかしオクターブ奏法が始まると、その柔らかさの奥に何か固いものがあることがわかる。甘いのに、芯がある。 このアルバムはオリヴァー・ネルソンが編曲したブラスとウッドウィンドが後ろにいる。ウェスのギターは、その大きな音の塊の中で、一本だけ違う温度を持っている。"O Morro"ではボサノヴァのリズムがゆっくり揺れて、"Naptown Blues"ではインディアナポリスの空気が匂う。ウェスは1923年にその街で生まれた。 コーヒーが冷める前に、A面が終わった。 Pairing Coffee:WOTE KONGA。浅煎り、軽く、柑橘の後味。ウェスのギターの温度に、少し似ている。
福井県公安委員会許可第 521130011322 号
道具商
memento 株式会社

