Peggy Lee / Black Coffee 【USED Vinyl】
¥1,800
残り1点
International shipping available
真夜中、眠れない。
床を歩きまわり、ドアを見張る。そのあいだにブラック・コーヒーを飲む。恋は使い古しのブルース。日曜の午後がどんなものか、この平日の部屋では永遠にわからない。午前一時から四時まで、影に話しかけている——「Black Coffee」の歌詞は、そういう夜の記録だ。
ペギー・リー。彼女は叫ばない。囁く。声を張り上げるかわりに、引く。その引き算が、聴く者の身を乗り出させる。ジューン・クリスティでもクリス・コナーでもない、この乾いた官能。ニコチンと、冷めたコーヒーと、来ない誰かを待つ時間。
1953年から56年、デッカ録音。ジミー・ロウルズのピアノ、ピート・キャンドリのトランペットが、煙のように寄り添う。派手な伴奏はいらない。この声には、余白がいちばん似合う。
「I've Got You Under My Skin」も、「There's A Small Hotel」も、彼女が歌うと違う色になる。明るい曲でも、どこかに夜の匂いが残る。それがペギー・リーだ。
針を落とせば、眠れない夜が始まる。
──── COFFEE PAIRING ────
ブラックで。銘柄は問わない。
このレコードにミルクは要らない。砂糖も要らない。タイトルがすべてを言っている。ブラック・コーヒー。それだけだ。
強いて挙げるなら MANDHELING G1。深く、苦く、夜の重さを持つ一杯。眠れない夜の相棒として、これ以上のものはそうそうない。だが本当は、いま手元にあるブラックを、ただ黙って飲めばいい。ペギー・リーの声が、残りをやってくれる。
『Black Coffee』は、ペギー・リーを代表する一枚であり、ジャズ・ヴォーカルの永遠の名盤だ。オリジナルは1953年から1956年にかけてのデッカ録音。当初は10インチ盤として発表され、後に楽曲を追加して12インチLPとして完成した。
ペギー・リーの歌唱は、張り上げるのではなく引く。抑制と囁きによって、かえって深い官能とけだるさを描き出す。ジューン・クリスティやクリス・コナーと並ぶクール・ジャズ・ヴォーカルの系譜にありながら、彼女の声はより乾いて、より夜に近い。ニコチンと冷めたコーヒーの匂いがする、大人のための一枚だ。
伴奏はジミー・ロウルズ(p)、ピート・キャンドリ(tp)らによる小編成。派手なアレンジを排し、彼女の声に最大限の余白を与えている。表題曲「Black Coffee」は、眠れない夜に床を歩きまわり、影に話しかけながらブラック・コーヒーを飲む女を描いた、この上なくブルージーな一曲。
収録は「Black Coffee」「I've Got You Under My Skin」「Easy Living」「My Heart Belongs To Daddy」「It Ain't Necessarily So」「Gee Baby, Ain't I Good To You」「A Woman Alone With The Blues」「I Didn't Know What Time It Was」「When The World Was Young」「Love Me Or Leave Me」「You're My Thrill」「There's A Small Hotel」の全12曲。スタンダードを、すべてペギー・リーの色に染め上げている。
本品はMCA / 日本ビクターによる日本盤(モノラル)。ジャズ・ヴォーカルを聴くなら避けて通れない、夜のための決定盤。
【コンディション評価 / Discogs Grading】
盤 (Media): VG+
ジャケット (Sleeve): VG+
帯 (Obi): VG+
──────────────────────
■ 盤面 (Vinyl) — VG+
Side 1 / Side 2 ともに光沢良好。深いスクラッチは見当たらない。経年相応のヘアライン(細かな薄スレ)がうっすらある程度。レーベル面(MCA 虹色ヘキサゴン)も汚れ・書き込みなく良好。
デッドワックス:MG 4864-1114(Side 1)
■ ジャケット (Jacket) — VG+
表面:コーヒーカップのデザイン。印刷・光沢とも良好。右上に折れあり。
裏面:歌詞カード面。全曲の歌詞を印刷。経年のヤケは軽微。テキストの視認性に問題はない。
背・角:リングウェアは軽微。シームスプリット(継ぎ目の裂け)は現状確認できない。
■ 帯 (Obi) — VG+
茶色地の帯付き。破れ・欠けなし。「MCA-3023」「¥1,500」「MCAレコード」「特典」表記、収録曲リストあり。
■ 付属
歌詞カード(ジャケット裏に印刷)。
※コンディション評価はあくまで主観による。中古品・経年品であることを理解のうえ、写真もあわせて判断のこと。
【詳細情報 / Detailed Information】
アーティスト:Peggy Lee(ペギー・リー)
タイトル:Black Coffee(ブラック・コーヒー)
別題:Black Coffee With Peggy Lee
レーベル:MCA Records / 日本ビクター(Victor Company of Japan, Ltd.)
シリーズ:MCAジャズ・ヴォーカル名盤シリーズ ②
カタログ番号:MCA-3023
規格番号:MAP/S 3228 / MG 4864(Side 1)/ MG 4865(Side 2)
原盤:Decca(1953-1956年録音)
フォーマット:LP, Album, Reissue, Mono
回転数:33 1/3 rpm
発売:日本盤(Licensed by MCA Records International)
定価(当時):¥1,500
デッドワックス:MG 4864-1114
製造:MANUFACTURED BY VICTOR COMPANY OF JAPAN, LTD.
──────────────────────
【トラックリスト / Tracklist】
Side 1
1. Black Coffee (P. F. Webster - S. Burke)
2. I've Got You Under My Skin (Cole Porter)
3. Easy Living (L. Robin - R. Rainger)
4. My Heart Belongs To Daddy (Cole Porter)
5. It Ain't Necessarily So (I. Gershwin - G. Gershwin)
6. Gee Baby, Ain't I Good To You (D. Redman - A. Razaf)
Side 2
1. A Woman Alone With The Blues (Willard Robinson)
2. I Didn't Know What Time It Was (L. Hart - R. Rodgers)
3. When The World Was Young (J. Mercer - M. Phillips - Gérard)
4. Love Me Or Leave Me (G. Kahn - W. Donaldson)
5. You're My Thrill (S. Clare - J. Gorney)
6. There's A Small Hotel (L. Hart - R. Rodgers)
──────────────────────
【パーソネル / Personnel】
Peggy Lee — vocals
Jimmy Rowles — piano
Pete Candoli — trumpet
Max Wayne — bass
Ed Shaughnessy — drums
Recorded 1953-1956 (Decca)
歌詞を追うと、このアルバムが一貫して「夜」と「孤独」と「恋」をめぐる作品であることがわかる。
表題曲「Black Coffee」は、眠れない女の独白だ。床を歩きまわり、ドアを見張り、そのあいだにブラック・コーヒーを飲む。恋は使い古しのブルース。日曜の午後がどんなものか、この平日の部屋では永遠にわからない。午前一時から四時まで影に話しかけ、時間の進みの遅さを嘆く。ニコチンと、地面のように沈んだ気分。来ない誰かを待ちながら、コーヒーとタバコで過去の悔いを溶かす——そういう夜の歌である。
「I've Got You Under My Skin」はコール・ポーターの名曲。抗おうとしても抗いきれない恋を歌う。「Easy Living」は、あなたのために生きることは容易い、という愛の肯定。「My Heart Belongs To Daddy」もポーター作で、軽妙な官能をまとう。
「A Woman Alone With The Blues」は、ブルースを抱えて独りでいる女を描く。恋煩いには医者もいない。液体でも錠剤でも治せない。燃える記憶が心を焼く——アルバムの主題を凝縮したような一曲だ。
「When The World Was Young」は、華やかな夜の暮らしの裏にある喪失を歌う。人はコケットと呼び、マドモワゼルと呼ぶ。パーティの花形として生きるのは悪くない。だが、かつて世界が若かった頃の自分は、もういない——ボルドーの夏、柳の木、ボートを漕いだ日々。過ぎ去った時間への哀惜が滲む。
「There's A Small Hotel」は、願いの井戸のある小さなホテルを夢見る歌。二人で分かち合える、明るく清潔な一部屋。だが窓の外に見えるのは遠い尖塔ばかりで、人影はない——静かな親密さと、かすかな寂しさが同居する。
全体を通して、ペギー・リーは激することなく、囁くように歌う。歌詞の一つひとつが、声を張らないからこそ深く届く。夜の匂いのするスタンダード集。それがこのアルバムの本質だ。
福井県公安委員会許可第 521130011322 号
道具商
memento 株式会社

