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Satin Doll - Sam Gendel 【USED Vinyl】
¥4,200
サックスが溶けている。 そう感じる瞬間が、このアルバムのどこかに必ずある。旋律はある。しかしその輪郭が、少しずつ崩れていく。デューク・エリントンの”Satin Doll”、チャールズ・ミンガスの”Goodbye Pork Pie Hat”、マイルス・デイヴィスの”Freddie Freeloader”。誰もが知っているスタンダード曲が、ゲンデルの手を通ると、別の何かになって出てくる。原型は残っている。しかし夢の中で聴くような、輪郭がぼやけた何かだ。 録音は2日半で終わった。三人が同じ部屋にいた。ヘッドフォンなし、クリックトラックなし、Abletonなし。赤いランプが点いて、演奏して、止まる。次へ進む。そういう作り方だ。“Afro Blue”は友人の結婚披露宴でそのまま演奏したライブ録音で、リハーサルも打ち合わせもなかった。それでもあの音になった。 ゲンデルはサックスをただの金属の塊だと言った。でも正しい形に曲げられた金属だ、とも言った。このアルバムを聴くと、その意味が少しわかる気がする。楽器を愛しているのに、楽器に縛られていない。 ジャズと呼んでもいい。しかしジャズセクションに置くには少し違う、とPitchforkは書いた。その感覚は正しい。 コーヒーはYIRGACHEFFE ARICHAがいい。深煎りの奥に、花のような華やかさがある。このアルバムもそうだ。スタンダードという深みの奥に、別の光が宿っている。
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AE-30 - Sam Gendel 【USED Vinyl】SEALED
¥5,500
楽器は一本だけだ。Roland AE-30、デジタル・ウィンド・インストゥルメント。見た目はサックスに似ている。しかし中に入っているのは、ブラスセクション全体だ。フルートにも、チェロにも、尺八にも、ドラムキットにもなる。指づかいはサックスのままで、出てくる音は別の何かだ。サム・ゲンデルはそれを持って、アイスランドへ行った。2021年の夏、映像作家のマルセラ・シトリノヴィッチと一緒に。溶岩原と氷河と、風の音しかない場所で、ひとりで吹いた。ビクトールという地元の救助隊員が、改造したランドクルーザーで人が入れない場所まで連れていった。録音した。それがこのアルバムだ。15曲、全部で20分ちょっと。一曲が短い。一分のものもある。しかし短いからといって軽いわけではない。スケッチ、とも呼べる。しかしスケッチの中に、その場所でなければ出てこなかった何かが入っている。"NATURE BOY"を氷河の前で演奏した、とゲンデルは言っている。そうでなければあの音にはならなかった、ということが、聴けばわかる。ジャズかどうかという問いは、このアルバムには似合わない。アンビエントとも少し違う。ジョン・ハッセルの名前が浮かぶ人もいるだろう。しかしゲンデルはゲンデルだ。ロサンゼルスのサックス奏者が、アイスランドの風景の中で、デジタル楽器と格闘した記録。それ以上でも以下でもない。 コーヒーは冷め切っている、アルバムが終わっていた。 似合うコーヒーは一体なんだろう。記憶を意味するmementoというブレンドだ。

