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Pithecanthropus Erectus / The Charlie Mingus Jazz Workshop 【Used Vinyl】
¥2,600
Pithecanthropus Erectus / The Charlie Mingus Jazz Workshop Atlantic 1237 / 1956 タイトルは「直立猿人」。人類が二本足で立ち上がった瞬間の話だ。 ミンガスはそれを、音楽で再現しようとした。起源から、誕生から、まだ名前のない何かが立ち上がるところから。冒頭の不協和音が鳴り始めたとき、これは不快なのか快感なのか、しばらく判断がつかない。それでいい。 コーヒーもそうだ。最初の一口が、苦いのか旨いのか、わからないときがある。 マンデリンG1の深煎り。インドネシアの土から来た豆で、スパイシーで、アーシーで、どこか原始的な味がする。文明の話ではない。もっと前の話だ。このレコードに合っている。
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The Eminent Jay Jay Johnson Volume 1 【Used Vinyl】
¥5,500
The Eminent Jay Jay Johnson Volume 1 Blue Note 1505 / 1953 トロンボーンがここまで速く動けるとは、知らなかった。JJジョンソンはビバップをトロンボーンに持ち込んだ。誰もできないと思っていたことを、ただやった。クリフォード・ブラウンが横にいる。若いミンガスが下を支えている。全員、急いでいる。急いでいるのに、ちっとも雑ではない。コーヒーが届く前に、A面が終わった。ペアリングはmemento。記憶という意味のブレンドは中深煎りでバランスがいい。速さの中に軸がある、このアルバムに似ている。
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CONCIERTO / JIM HALL 【Used Vinyl】
¥2,200
ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」をジャズで演奏する、というのは大きな賭けだった。 ジム・ホールはその賭けに、静かに勝った。フルアコースティックのギターは温かく、しかしコードが展開するたびに鋭くなる。チェット・ベイカーがいる。ポール・デスモンドがいる。豪華という言葉が似合わない人たちが、豪華に集まっている。 一曲目が終わったとき、コーヒーに手をつけるのを忘れていた。 Pairing Coffee:YIRGACHEFFE ARICHA。深煎りの奥に華やかさがある。静かなのに、遠くまで届く。
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Satin Doll - Sam Gendel 【USED Vinyl】
¥4,200
サックスが溶けている。 そう感じる瞬間が、このアルバムのどこかに必ずある。旋律はある。しかしその輪郭が、少しずつ崩れていく。デューク・エリントンの”Satin Doll”、チャールズ・ミンガスの”Goodbye Pork Pie Hat”、マイルス・デイヴィスの”Freddie Freeloader”。誰もが知っているスタンダード曲が、ゲンデルの手を通ると、別の何かになって出てくる。原型は残っている。しかし夢の中で聴くような、輪郭がぼやけた何かだ。 録音は2日半で終わった。三人が同じ部屋にいた。ヘッドフォンなし、クリックトラックなし、Abletonなし。赤いランプが点いて、演奏して、止まる。次へ進む。そういう作り方だ。“Afro Blue”は友人の結婚披露宴でそのまま演奏したライブ録音で、リハーサルも打ち合わせもなかった。それでもあの音になった。 ゲンデルはサックスをただの金属の塊だと言った。でも正しい形に曲げられた金属だ、とも言った。このアルバムを聴くと、その意味が少しわかる気がする。楽器を愛しているのに、楽器に縛られていない。 ジャズと呼んでもいい。しかしジャズセクションに置くには少し違う、とPitchforkは書いた。その感覚は正しい。 コーヒーはYIRGACHEFFE ARICHAがいい。深煎りの奥に、花のような華やかさがある。このアルバムもそうだ。スタンダードという深みの奥に、別の光が宿っている。
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AE-30 - Sam Gendel 【USED Vinyl】SEALED
¥5,500
楽器は一本だけだ。Roland AE-30、デジタル・ウィンド・インストゥルメント。見た目はサックスに似ている。しかし中に入っているのは、ブラスセクション全体だ。フルートにも、チェロにも、尺八にも、ドラムキットにもなる。指づかいはサックスのままで、出てくる音は別の何かだ。サム・ゲンデルはそれを持って、アイスランドへ行った。2021年の夏、映像作家のマルセラ・シトリノヴィッチと一緒に。溶岩原と氷河と、風の音しかない場所で、ひとりで吹いた。ビクトールという地元の救助隊員が、改造したランドクルーザーで人が入れない場所まで連れていった。録音した。それがこのアルバムだ。15曲、全部で20分ちょっと。一曲が短い。一分のものもある。しかし短いからといって軽いわけではない。スケッチ、とも呼べる。しかしスケッチの中に、その場所でなければ出てこなかった何かが入っている。"NATURE BOY"を氷河の前で演奏した、とゲンデルは言っている。そうでなければあの音にはならなかった、ということが、聴けばわかる。ジャズかどうかという問いは、このアルバムには似合わない。アンビエントとも少し違う。ジョン・ハッセルの名前が浮かぶ人もいるだろう。しかしゲンデルはゲンデルだ。ロサンゼルスのサックス奏者が、アイスランドの風景の中で、デジタル楽器と格闘した記録。それ以上でも以下でもない。 コーヒーは冷め切っている、アルバムが終わっていた。 似合うコーヒーは一体なんだろう。記憶を意味するmementoというブレンドだ。
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DJANGO - MODERN JAZZ QUARTET 【Used Vinyl】
¥2,200
タイトル曲「Django」は、1953年に死んだギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトへの追悼だ。作曲したのはピアニストのジョン・ルイス。しかし音楽は悲しくない。静かで、端正で、どこか遠い場所を見ている。 モダン・ジャズ・カルテットは四人だ。ミルト・ジャクソンのヴァイブラハープ、ジョン・ルイスのピアノ、パーシー・ヒースのベース、ケニー・クラークのドラム。騒がしくない。主張しすぎない。それでいて、誰一人いなくなったら成立しない音楽だ。 タキシードを着てコンサートホールで演奏するジャズ、と言われた。批判する人もいた。しかしルイスはバッハを愛していた。その愛が、ジャズの語法と静かにぶつかっている。 コーヒーはYIRGACHEFFE ARICHAがいい。深煎りの奥に、花の気配がある。端正な外見の下に、何かが宿っているものだ。
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Herbie Mann – Herbie Mann At The Village Gate【USED Vinyl】
¥1,940
コーヒーが冷めるまでの時間に、何かを考えようとして、何も考えられなかった。そういう午後がある。 Herbie Mann – At The Village Gate Atlantic SD 1380 / 1962 1961年11月、Village Gate。Herbie Mannはフルートを持って、三曲だけ吹いた。それで十分だった。"Comin' Home Baby"、"Summertime"、"It Ain't Necessarily So"。最後の一曲は二十分つづく。長いとは思わない。コンガが鳴りやまないから。 アフロ・キューバンとボサノヴァとハードバップ。どれでもある、どれでもない。ジャンルというのは、後から人間が貼るラベルだ。音楽はその前から、ただ鳴っている。 カップを持ち上げると、もうぬるかった。 Paring Coffee あえてのマンデリン。スパイシーに、エキゾチックに。

